楽器の中でも一番身近に感じやすい「ピアノ」。
皆さんはこの「ピアノ」という楽器がいつ頃生まれ、なぜそのような名前になったかご存知でしょうか?

ピアノの発祥はいつ?

ピアノはイタリアのバルトロメオ・クリストフォリ(1655-1732)によって1709年に発明されました。
楽器としての機能が整備され、幅広く用いられるようになるのは18世紀後半になってからですが、発明された時代にはバッハヘンデルヴィヴァルディといったバロック時代を代表する作曲家が活躍していました。

当時のピアノの鍵盤は54鍵ほど。現代の一般的な鍵盤数である88鍵に比べると、少なく感じますよね。
この54鍵の鍵盤は時代が進むにつれて、幅広い表現を求める作曲家の出現により次第に音域が広がっていき、今の88鍵に落ち着きました。

ピアノが誕生する前の鍵盤楽器

ピアノと同じく弦鳴楽器(弦を振動させることによって発音する楽器)でピアノより古い歴史を持つものとしては以下が挙げられます。

チェンバロ(イタリア語)

英語ではハープシコード、フランス語ではクラヴサンと称されています。
鍵盤を押さえると弦をプレクトラム(ギターでいうピックのようなもの)で弾いて音を出す楽器です。

1397年に「オーストリアのヘルマン・ポールという人物がクラヴィチェンバルムという楽器を発明したと主張している」という記述がチェンバロについての最古の記述だといわれています。

チェンバロの最大の特徴として、その構造上、音の強弱をつけることができません
音の強弱がつけられない故に、繊細さの表現に制約があるため、後に生まれた楽器に人気を奪われていきますが、その華麗で力強い音色には根強い人気があります。

現在でも、チェンバロが持つ個性を活かして、POPSにも取り入れられていますが、クラシックに馴染みのない方にとっても、このメロディはチェンバロの音色が馴染む曲としてご存じではないでしょうか?

クラヴィコード

主に16世紀〜18世紀にかけて広く使用されていました。
モーツァルトやベートーヴェンの時代にも存在しており、彼らも演奏をしていたようです。

クラヴィコードの最大の特徴は、ビブラート(音の高さをゆらすこと)がかけられて、音の強弱の表現ができること。

以下の動画で、実際にビブラートをかけているところが確認出来ます(5秒程度ですが…)。これはピアノでは出来ない表現なので面白いですね。

チェンバロでは出来なかった、音の強弱を付けることが出来るクラヴィコード。

鍵盤を押すと、タンジェントと呼ばれる真ちゅうの棒が弦を打ち、振動を起こさせて音を出す仕組みを備えていて、音域は4~5オクターブでした。
引用元: ピアノの成り立ち:ピアノ誕生ストーリー – 楽器解体全書 – ヤマハ株式会社

しかし、そのクラヴィコードには数メートル離れてしまうと、ほとんど聞こえないくらいに音量が非常に小さいという、弱点がありました。

以下は、チェンバロとクラヴィコードをどちらも演奏されている動画です。音量の違いに注目してみてください。(2分23秒からクラヴィコード)

そもそもピアノの正式名称とは?

普段私たちは「ピアノ」と称していますが、実はこれ、略称なんです!

冒頭でご説明した通り、1709年にイタリアのクリストフォリが、プレクトラム(ピック)で弦をはじいて鳴らす代わりにハンマーで弦を打って鳴らすメカニズムを発明。
その構造を採用した楽器、つまり「ピアノ」の正式名称は「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」というイタリア語です。
あまりに長いので驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「クラヴィチェンバロ」=チェンバロ(イタリア語)
「ピアノ・エ・フォルテ」=小さい音と大きい音

つまり、「小さい音と大きい音を出すことのできるチェンバロ」という意味です。
楽譜上で音の強弱を表す意味でも用いられる「p(ピアノ:弱く)」、「f(フォルテ:強く)」ですが、現代でもピアノを表す時の略称として「pf」と表記されることがあります。

弦を「はじく」のでは無く、「打って」鳴らすという構造は、クラヴィコードと同じです。
ピアノが誕生する前に活躍していたチェンバロ、クラヴィコードといった楽器が深く関わり、より良いものを作ろうとした結果、現在のピアノが完成されたのですね!

普段弾いている楽器でも歴史を紐解いてみると非常に深く、演奏する時にさらに楽器に対する愛着が湧きますよね。
今までと少し違った気持ちでピアノの前に座ってみてはいかがでしょうか?